アラフォーバツイチ、花ざかり。
「車で移動することが多いから、つい忘れちゃうんだよね。決して相合傘を狙ったわけじゃないよ」
「どうだか」

 久しぶりに叩く軽口は、思いのほか心地いい。

 淡い水色の傘の下、前は手を繋いでいた彼の隣を、今は微妙な間隔を空けて歩く。恋人期間も含めれば、五年もこの位置にいたんだな。

 なんとなくセンチメンタルな気分で、街の明かりが反射する地面を見下ろしていると、樹が「濡れるし、どこか寄らない?」と問いかける。

 本当は歩きながら話せればいいと思っていたけれど、確かにこの天気では厳しいので近くのカフェに入ることにした。

 雨粒が軽く当たる窓際の席で、私は温かいラテを飲みながら言う。

「ちゃんと働いてるみたいで安心した。まさか移動販売をするとは思わなかったけど」
「俺も、あの頃はこうなるなんて想像もしなかったよ。マコと別れてから、廃人みたいに本当に一歩も外に出たくなくなったし」

 彼の言う通り、別れてから数カ月後に会った時はだいぶやつれていたっけ。

 心配だったし、心底嫌いになって別れたわけじゃなかったから、手助けしてあげようか少し迷った。けれど、かろうじて仕事は続けていたので、心を鬼にしてきっぱり離れたのだった。

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