アラフォーバツイチ、花ざかり。
「よかったー、残業しなくて」
「いなかったら日を改めてたよ」

 お礼は絶対しようと決めていたらしい。律儀なのはあなたもじゃないかと、ふっと笑みをこぼした。

 例の映画は何度見ても面白かったという話をしながら、透也の案内で普段あまり行かない高級マンションが並ぶほうへ向かう。暗くなった道を十五分ほど歩いた路地裏に、オレンジ色のランタンが優しく灯るシックなお店が現れた。

 ほの暗く落ち着いた雰囲気の中へ進むと、背面にたくさんのリキュールの瓶が並ぶカウンターが目に入る。その中で手際よく男性がシェイカーを振っていた。

 来慣れた様子の透也に対し、私はおしゃれな店内をキョロキョロと見回す。

「こんなところにダイニングバーがあったのね。雰囲気よくて素敵……!」
「昔からの仲間がここでバーテンダーをやってるんだよ。ほら、あいつ」

 私をカウンター席へ促す透也が、奥から「いらっしゃいませ」と言って出てきたバーテンダーの男性を顎で示した。

 やや長めの髪を後ろでひとつに縛った彼は、私たちを見てぱっと表情を明るくする。

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