One year left -家族ごっこ-
「俺とあんた、上手くやっていけるんじゃなかった?」


そらしたはずの視線を追いかけるように、彼が顔を傾け、私の視界に割り込んできた。


完全に心を読まれたような気がして、思わず数歩たじろぐ。


「上手くやっていこうね。お母さんとおじさんの為に」


これ以上彼の踏み込みを許したくなくて、とっさに距離を置くために右手を差し出し、握手を求めた。


けれど、差し出された私の手をじっと見下ろした彼は、ふっと冷ややかに唇の端を持ち上げるだけだった。


「マザコン」


残酷なほど意地が悪い、低く囁くような声音が、静かな廊下に響く。


お母さんのために尽くしてきた私の人生を、そんな一言で片付けられてしまった悔しさと悲しさで、身体のすべてが冷たく引き攣った。


「……そうかも」


宙で虚しく浮いてしまった手を、目の前にあるドアの指差しへと変えて、必死に動揺を覆い隠す。


「ここの部屋は、なに?」


もう、この男をまともに相手にするのはやめよう。


彼の容赦のない言動にいちいち心を乱されていたら、この先、私の心が持たなくなってしまう。
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