One year left -家族ごっこ-
「ここは洗面所、奥が浴室。あっちがトイレ。あそこの部屋はたぶん夫婦の寝室になるかもな」


碧くんは感情の起伏もない声で淡々と説明し、そのまま二階へと続く階段を登っていく。


「ここがバルコニー。隣が俺の部屋。斜め向かいがあんたの部屋。奥の部屋は親父が使ってる」


「私の部屋? 入ってみてもいい?」


「どーぞ」


自分の、部屋。


その響きだけで、胸がそっと震える。


お母さんと暮らしているあのアパートでは、自分の部屋があってないようなものだったから。


緊張しながらドアを開けると、そこには真っ白な壁が広がっていて、大きな窓から差し込む光が、明るい色のフローリングの上で優しく弾けていた。


「うわぁ、広い……」


「八畳くらい普通だろ」


素っ気ない声が、どこか遠くに感じる。


こんなに広くて綺麗な部屋を与えられても、私の心はまだ一階のあのリビングに取り残されたままだった。


お母さんとおじさんは、今、下で二人で何を話しているのだろうか。
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