One year left -家族ごっこ-
碧くんが反対すれば、いくら私が賛成しても、お母さんはきっと同居を諦めるだろう。


お父さんが亡くなってから、ずっと一人で私を育ててくれたお母さん。


おじさんと出会って、恋をして、ようやく幸せになれるのに。


それが、彼の一言ですべて消えてしまうかもしれない。


「……同居、したくないの?」


必死に圧し殺したはずの声が、情けなく震えた。


感情が急激に昂ぶり、胸がぎゅっと冷たく締めつけられる。


やだ。


泣きたくない。


泣きたくないのに、自分の無力さがたまらなく悔しくて、視界が涙で遮られていく。


「単純に、気になっただけだけど?」


碧くんは悪びれる風でもなく、相変わらず何を考えているのか読めない瞳で私を見つめている。


その態度に激しい苛立ちを覚え、私は掴まれていた手首を力任せに振り払った。


「したくないの? してもいいの? それとも私をからかってるの?」


「泣くなよ」


低い声が、静かに部屋に響く。


泣いてない、と言いかけて、私は口を閉ざした。
< 16 / 354 >

この作品をシェア

pagetop