One year left -家族ごっこ-
彼の心はもう、東京にいるあのひとの方へ向かってしまっているのだろうか。


そう思うだけで、視界の端がじわりと熱くなる。


すべてを残してこの街から消えるのだと、一人で生きていくのだと決めている。


それなのに、私の身体は、狂おしいほどに碧くんの熱を求めていた。


もう、冷やし中華は一口だって喉を通らなかった。

 
「お母さん、ごめんなさい。……ごちそうさま」 


「えっ、もういいの?」 


お母さんが箸を止め、不思議そうにこちらを見た。


「うん。せっかく作ってくれたのに、ごめんね」


半分ほど残った器の中身を、三角コーナーへと流し落とす。


これ以上碧くんの前にいたら涙が零れてしまいそうだったから。


逃げるように食器を洗い、泡を洗い流して片付ける。

 
そのまま、自分の部屋へと駆け込んだ。


まだ掃除もしていない。


バルコニーの洗濯物だって、取り込んで畳まなくちゃいけないのに。


私の身体は重い鉛のようになって、ベッドの上にうずくまることしかできなかった。
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