One year left -家族ごっこ-
冷房の冷気が肌を撫でていく。
ひどく、喉が渇いていた。
砂漠の真ん中に放り出されたみたいに、心ごと、からからに萎(な)びていくようだった。
気がつけば、窓の向こうでしぶとく残っていた濁った血のような夕焼けが、ようやく夜の闇に塗り潰されようとしていた。
仕事から帰宅したおじさんを囲み、家のリビングにはいつものように、一階のオレンジの明かりが灯っている。
「ねえ、雅也さん。あれ、みんなに見せてあげて!」
お母さんが嬉しそうな声で促すと、おじさんは笑顔を浮かべ、カバンから一冊のパンフレットを取り出した。
テーブルの上を滑るようにして差し出されたそれには、緑豊かな山々に囲まれた、昔ながらの老舗旅館の佇まいが印刷されている。
「仕事の付き合いがある取引先から、直前でキャンセルになった部屋を譲ってもらったんだ」
おじさんがおっとりとした口調で微笑む。
「お盆は、家族四人で温泉旅行に行こう」
おじさんの言葉がリビングに響いた瞬間、テーブルの上でまた碧くんのスマホがブーッと低く鳴った。
ひどく、喉が渇いていた。
砂漠の真ん中に放り出されたみたいに、心ごと、からからに萎(な)びていくようだった。
気がつけば、窓の向こうでしぶとく残っていた濁った血のような夕焼けが、ようやく夜の闇に塗り潰されようとしていた。
仕事から帰宅したおじさんを囲み、家のリビングにはいつものように、一階のオレンジの明かりが灯っている。
「ねえ、雅也さん。あれ、みんなに見せてあげて!」
お母さんが嬉しそうな声で促すと、おじさんは笑顔を浮かべ、カバンから一冊のパンフレットを取り出した。
テーブルの上を滑るようにして差し出されたそれには、緑豊かな山々に囲まれた、昔ながらの老舗旅館の佇まいが印刷されている。
「仕事の付き合いがある取引先から、直前でキャンセルになった部屋を譲ってもらったんだ」
おじさんがおっとりとした口調で微笑む。
「お盆は、家族四人で温泉旅行に行こう」
おじさんの言葉がリビングに響いた瞬間、テーブルの上でまた碧くんのスマホがブーッと低く鳴った。