One year left -家族ごっこ-
いま、あの家に一人で残された碧くんは、何をしているだろう。 


もうあのひとと会うために、出かける準備を始めているのだろうか。


想像するだけで、胸の奥が鋭くひび割れて、ちぎれそうなほどの痛みが全身を駆け巡る。


肺が破裂しそうなほどに激しく上下し、足の感覚が麻痺していく。


インターロッキングの隙間からしぶとく伸びる夏草の匂いが、鼻腔の奥にへばりついて離れない。


遠くの空で、今夜の花火大会を予告する号砲の音が、ドーンと低く地鳴りのように響いた気がした。


私は髪を振り乱したまま、家のドアを目指して、真夏の陽炎のなかをひたすらに走り続けた。


ようやく視界に捉えた見慣れた家の門をくぐり、一気に玄関のステップを駆け上がる。


鍵のかかっていない玄関のドアを、私は体ごとぶつけるようにして押し開けた。 


「はぁ、はぁ、……っ」  


肺が焼けるような呼吸の音が、狭い空間に荒々しく響く。


すぐに碧くんの名前を叫ぼうとして、私はたたき落とされた視線の先で、言葉を失った。
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