One year left -家族ごっこ-
この十日余り、まともな睡眠なんて取れていなかった。


ベッドに横たわった瞬間、すべての緊張が解けた私の身体は、底のない深い眠りの中へと落ちていった。


どれほどの時間が経ったのだろう。


「――萩花」


耳元に触れるような、低く甘やかな声が暗闇に溶ける。


自分の名前を呼ぶその響きに手繰り寄せられるように、私はゆっくりと意識の底から浮上した。


薄く開けた視線の先、冷房で冷え切った部屋の空気のなかで、私のベッドの端に大きな影が腰掛けている。


「……あ、れ」


寝起きの掠れた声で、私はその影を見上げた。


シルバーの髪が、窓の外から差し込む夜の街灯に白く透けている。


碧くんが、暗闇の中で静かに私を見下ろしていた。


「みんなは……?」


「あいつらなら、花火を見に行った」 


「碧くんは、行かなかったの?」
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