One year left -家族ごっこ-
「……碧くんは?」


「なにが?」


「碧くんは、寂しかった?」


「さあ?どうだろうな」


碧くんは大きな手で、私の後頭部をそっと包み込むと、そのまま自分の広い胸元へと優しく引き寄せるようにして、私の頭を彼の肩口に預けさせた。


そのあたたかさの奥に潜む、どこか底冷えするような静けさが私の体温までも奪っていくようで、胸がせつなく締めつけられる。


「たぶん、諦めてた。子供ながらに。だから、離婚も納得してた」


おでこがぴったりと触れ合う彼の厚い胸から、確かな鼓動が私の耳へとまっすぐに響いてくる。


こうして全身で受け止めていると、彼の消えない傷痕が、私の骨の髄へと痛いくらいにしっとりと染み込んでいくようだった。


「母親が俺を置いて出て行ったことも、あの人の性格上、仕方のないことだった」


私の頭を包み込む彼の大きな手のひらに、確かな重みを伴って強い力が込められるのが分かった。


顔が見えないその暗闇のような狭さのなかで、碧くんはずっと心の奥底に閉じ込めてきたはずの決定的な言葉を、私に向けて淡々と漏らす。
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