One year left -家族ごっこ-
予想もしなかった真っ直ぐな言葉に、私は動きを止めた。


屈んだ姿勢のまま、隣に佇む碧くんの顔をじっと下から見つめる。


冗談を言っている風でもなく、彼は真剣な目で硝子鉢を見つめていた。


「……なに」


じっと見つめられていることに気づいた碧くんが、ゆっくりとこちらに視線を巡らせる。


彼の耳たぶから頬にかけて、仄かな赤みが広がっていくのがはっきりと分かった。


「ううん。キンちゃんとギョピからは、ずいぶん掛け離れた名前だなと思って」


「……真面目に考えたんだけど」


「あれ、顔、赤いよ?」


「……うるさい」


碧くんはきまずそうに、わずかに片眉を上げて目を細める。


「これから宜しくね、愛ちゃん」


そんな彼の反応が可愛くて、私はもう一度金魚鉢へと向き直った。


硝子のすぐ近くまで顔を近づけ、ひらひらと泳ぐ小さな命に、新しい名前をそっと呼びかける。


お母さんからの愛を求めていた私たちが、これからはこの場所で、二人で、新しい愛を育てていくんだ。
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