One year left -家族ごっこ-
私たちは自然と、すぐ傍らにあるリビングボードのうえへと視線を戻した。


そこには、少しいびつな形をした小さな金魚鉢のなかで、赤い金魚がひらひらと尾ひれを揺らして泳いでいる。


「金魚に名前、つける?」


碧くんもその硝子鉢を見つめたまま、少し低めの声で呟いた。


「碧くんが昔飼ってた金魚の名前は、なんだったの?」


「キンちゃんと、ギョピ」


「そのままだね」


私は思わず吹き出してしまった。


碧くんのぶっきらぼうなネーミングセンスが可笑しくて、愛おしくて、さっきまで泣いていたのが嘘みたいに、私の唇から自然な笑顔がこぼれ落ちる。


「大切に育ててあげたいな……」


私はガラスの金魚鉢の前へと顔を近づけた。


透明な水の向こうで揺れる赤い影を見つめながら、人差し指の腹で硝子の表面を優しく小さく弾く。


こちらの気配に驚いたのか、金魚が水の中で小さく尾を振った。


「だったら、愛でいいんじゃない?」


「愛?」


「大切に“愛して”育ててあげるって意味」
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