One year left -家族ごっこ-
【自由】
夏休みが明けた最初の日は、少し気怠い水曜日だった。
午後までの長い進路指導が終わった後の教室は、冷房が心地よく効いていて、外の暑さを忘れさせるほど静かに張り詰めている。
クラスメイトたちが安心したように次々と扉の向こうへ消え、楽しげな賑やかさが遠ざかっていくのを、私はただ机の上の就職希望調査の紙とじっとにらめっこしたまま、一人で残っていた。
地元の大きな工場の名前を書いて、その文字をペン先で見つめていると、不意に教室の扉が開く。
「萩花、何してんのー?」
入ってきたのは、夕紗、希歩、それから凛だった。
三人は私の机を囲むようにして立ち止まり、真っ白な紙に新しく書き込まれた地元の企業名へと、不思議そうに視線を落とす。
最初に口を開いたのは、夕紗だった。
「え!就職先変えるの?」
夕紗は手にしたスクールバッグを机の端に置き、信じられないものを見たというように両手を突いて、ぐっと顔を覗き込んできた。
「うん、地元にしようと思ってる」
私の口から放たれた言葉に、夕紗の横で希歩が目を丸くして身を乗り出す。
「なんで!?あんなに県外行きたがってたのに」
その純粋な疑問に、私の心はどこまでも澄み渡っていった。
午後までの長い進路指導が終わった後の教室は、冷房が心地よく効いていて、外の暑さを忘れさせるほど静かに張り詰めている。
クラスメイトたちが安心したように次々と扉の向こうへ消え、楽しげな賑やかさが遠ざかっていくのを、私はただ机の上の就職希望調査の紙とじっとにらめっこしたまま、一人で残っていた。
地元の大きな工場の名前を書いて、その文字をペン先で見つめていると、不意に教室の扉が開く。
「萩花、何してんのー?」
入ってきたのは、夕紗、希歩、それから凛だった。
三人は私の机を囲むようにして立ち止まり、真っ白な紙に新しく書き込まれた地元の企業名へと、不思議そうに視線を落とす。
最初に口を開いたのは、夕紗だった。
「え!就職先変えるの?」
夕紗は手にしたスクールバッグを机の端に置き、信じられないものを見たというように両手を突いて、ぐっと顔を覗き込んできた。
「うん、地元にしようと思ってる」
私の口から放たれた言葉に、夕紗の横で希歩が目を丸くして身を乗り出す。
「なんで!?あんなに県外行きたがってたのに」
その純粋な疑問に、私の心はどこまでも澄み渡っていった。