One year left -家族ごっこ-
「今日誰も残ってないし、教室でダンスの練習するか」


夕紗がパンと両手を叩いた。


「やった、冷房効いてるし最高!」


希歩が声を弾ませる。


「じゃあ早く着替えて、パパッと練習しちゃお。先生来たら怒られちゃうしね」


凛がクスッと笑いながら、スクールバッグから練習着を取り出した。


私たちは動きやすいダンス着に着替えてから、並んでいた机と椅子を前の方へと押し進めていった。


ガタガタと金属の擦れる音が教室に響く。


遮るもののなくなった後方には、手足を大きく広げて踊るための、広々とした空間が作り出される。


夕紗がいつも通りスマホを操作すると、スピーカーから低音の効いたトラックが流れ出す。


彼女たちがそのリズムに合わせてウォームアップを始めるなか、私は一つ呼吸を置いて、その背中に声をかけた。


「ねぇ、みんな」


全員の視線が一斉に私へと集まる。


「私、これからは水曜日以外の日も、放課後みんなと一緒にダンスの練習がしたい」


首を回していた夕紗がぴたりと動きを止め、目を丸くして私を見る。


凛も希歩も呆気にとられたように動きを止めていた。
< 359 / 405 >

この作品をシェア

pagetop