One year left -家族ごっこ-
手慣れた動作で自転車の後ろへと乗り込み、その広い背中にそっとしがみついた。


彼が力強くペダルを漕ぎ出し、夜の穏やかな空気のなかを、ささやかな二人の速度で滑り出していく。


碧くんの背中から伝わる体温に包まれながら、胸に温めていた言葉を口にした。


「あのね、碧くん。私、学校の文化祭でもダンスのステージに出ることにしたよ」


彼は自転車の速度を少しだけ緩め、身体を軽く斜めに傾けて、背後からつかまる私の顔を不意を突かれたように覗き込んできた。


「すごいな」


その少し驚いた声には、自ら光の道を歩き始めた私への、深い敬意が真っ直ぐに宿っていた。


「俺も見に行っていい?」


「碧くんに、見に来てほしいの」


「いつ?」


「十月初めの、土曜日」


「わかった。楽しみにしてる」


低く落ち着いた彼のその一言には、胸を焦がす待ち遠しさが静かに滲み出ていた。
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