One year left -家族ごっこ-
準備が一段落したとき、凛が手元でスマホの画面をタップして、嬉しそうに顔を上げる。


「萩花、私たちの出番までまだ時間あるし、お互いの彼氏に会いに行こう?今、私のクラスのカフェにいるんだって!」


岳くんからのラインのメッセージを見せながら、凛は私の手を力強く引っ張っていく。


「え、ちょっと待って。この格好で行くの!?」


「もちろん!私たちの無敵の姿、見せに行っちゃお!」


戸惑う私の手を引いたまま、凛は一般の来場者や生徒たちで行き交う、賑やかな廊下へと迷うことなく飛び出していった。


上半身をタイトに包む黒のトップスと、真っ赤なリップを纏った私たちのシルエットは、白い校舎の中で際立つほどの存在感を放っていた。


すれ違う誰も彼もが息を呑み、まるで釘付けにされたかのように、一斉にこちらへと顔を向けてくる。


廊下を埋め尽くす大勢の人々の振り返る眼差しに正面から晒されながらも、私は身体の芯から自信がみなぎっていた。


足元のルーズなカーゴパンツをはためかせながら、凛の教室へと向かって、確かな重みを持って進んでいく。
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