One year left -家族ごっこ-
ドアを開ける遥か手前から、その廊下だけが異様な熱狂と人だかりで完全に塞がっているのが見えた。


「ちょっと待って、何これ……?」


凛が呆然と声を漏らすほど、カフェの周辺には、うちの高校の女子生徒たちが何重もの人垣を作って押し寄せていた。


人混みの隙間から教室のなかを覗き込もうと必死に背伸びをしている彼女たちの口から、甲高い声が次々と響き渡る。


「ねえ、本当に合月碧が来てるんだけど!」


「やば……っ!うつむいてるだけで、めっちゃカッコイイ」


その名前を耳にした瞬間、心臓が、甘く熱い鼓動を跳ね上げた。


「萩花、かき分けて入ろう!」


凛が私の手を強く引き、「ごめんなさい、ちょっと通してください」と声をかけながら、色めき立つ女子生徒たちの隙間を必死に縫うように進んでいく。


私たちが人垣を割って入るたびに、周囲の眼差しが驚いたようにこちらへと向けられていく。


大混雑する人波をようやくすり抜け、興奮の満ちる教室内へと一歩足を踏み入れる。


ジュースやパンケーキを囲む生徒たちで埋め尽くされた教室のなかでも、窓際のテーブル席に陣取る彼らの佇まいは、ひときわ目を引く派手な存在感で教室中の視線を独占していた。
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