One year left -家族ごっこ-
その時だった。


岳くんの隣に座っていた悠生くんが、興奮気味に身を乗り出してきた。


「え、めちゃくちゃ可愛いっす!萩花さん、その衣装もメイクも、ヤバいくらい似合ってるっす!」


悠生くんのその無邪気な大絶賛の声が、カフェのなかに響いた。


碧くんは悠生くんを無視し、大きな体格をゆっくりと椅子から立ち上がらせた。


そうして、無言で私との距離を詰めてくる。


圧倒的な体躯が私の頭上をすっぽりと覆い尽くし、周囲の女子生徒たちが思わず息を呑むほどの、高校生離れした男の存在感がその場を支配していく。


ギャラリーが「え、何……っ?」と一斉に見守るなか、碧くんは他人の目など微塵も気にする様子もなかった。


彼は大きな両腕を私の背中へと回し、その広い胸のなかに私を強く抱きすくめた。


高い体温と、彼のまとう心地よい香りが、一瞬にして五感を奪っていく。


「キャーッ!!」


「なに!?あの二人、付き合ってるの!?」


女子生徒たちから、黄色い悲鳴と驚きの声が波のように一気に広がっていく。


しかし、自分へと向けられるすべての視線を無関心に黙殺したまま、碧くんは私の首筋に顔を埋めるようにして、耳元を優しく包み込むような、低く掠れた声を投げかけてきた。


「綺麗すぎ。……他の男に見せたくない」


「あの、碧くん……みんな見てるから、早く離れて」


切実な言葉をさらりと受け流すように、彼はさらに腕の力を強め、私を自分の身体へと密着させながら不敵に囁き返す。


「見せつけてる。俺が彼氏だってこと、全員に分からせておかないとな」
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