One year left -家族ごっこ-
自動ドアをくぐると、夕紗たちはすでに奥のボックス席について、賑やかにおしゃべりを楽しんでいた。


「こっちこっち!」


私たちの姿にいち早く気づいた希歩が、大きく手を振る。


碧くんの連れというだけあって、一見すると派手で少し怖そうな男の子たちだったけれど、実際に席を囲んで話してみると、意外なほど気さくで礼儀正しい人たちだった。


ドリンクバーを行き来するうちにすっかり打ち解け、自然な流れでみんなでライン交換することになる。


その賑やかな空気のなかで、私はなんとなく、碧くんともラインの交換をした。


画面に表示されたシンプルなアイコンを、そっと指先で見つめる。


ふと、向かい側の席から夕紗がこちらを窺(うかが)っているのに気づいた。


“無事に話せたよ”と目で合図を送ると、彼女は小さく笑って、机の下でそっと親指を立ててみせた。


さっきまで身体を支配していた鉛のような重みは、嘘みたいに消え去っていた。


お母さんに、本当のことを話す。


窓の外に広がる夜の街並みを見つめながら、私の胸に灯った決心が揺らぐことはなかった。
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