One year left -家族ごっこ-
ただ、そこにいるだけなのに。 


周囲の異常な騒ぎように、冷ややかな感情が湧か上がる。


まるでアイドルを拝むファンそのものの熱狂。


合月碧という男が、どれほど周囲を惹きつけて離さないのかを、嫌というほど思い知らされる。


「久しぶり!」


希歩と凛が声を弾ませて、碧くんの方へと歩み寄っていった。 


その動きに誘われるようにして、出入り口の前にいた他の女子生徒たちも、一斉に駐輪場へと流れていく。


いつの間にか、彼の周囲は遠巻きな人だかりに囲まれていた。


私は夕紗の背後に半身を隠したまま、なんとか声を絞り出す。


「なにしてるの」


碧くんが、ゆっくりと顔を上げた。


深く澄んだ琥珀色の瞳が、まっすぐに、正確に私だけを射抜く。


「終わるの、待ってたから」


「誰を?」


「あんたを」


夜の静寂の中、低い声だけがやけに鮮明に響き渡った。


一瞬、世界が静止する。


希歩や凛、そして夕紗の三人だけでなく、周囲を取り囲むすべての視線が、いっせいに私へと突き刺さった。
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