野いちご源氏物語 五二 蜻蛉(かげろう)
(かおる)(きみ)浮舟(うきふね)(きみ)四十九(しじゅうく)(にち)法要(ほうよう)を手配なさる。
亡骸(なきがら)がないのだから、女君(おんなぎみ)は亡くなっていない可能性もあるけれど、いずれにせよ法要はよい行いだもの。
宇治(うじ)山寺(やまでら)阿闍梨(あじゃり)に命じて、ひそかに行わせなさったわ。
法要のためのお(そな)え物も十分お出しになる。

女君の母君(ははぎみ)も供え物をして法要に出席した。
匂宮(におうのみや)様からは、女君の女房(にょうぼう)右近(うこん)()てに品物が届いた。
宮様のお名前を出すわけにはいかないから、右近が自分の名前でお(そな)えする。
事情を知らない人たちは、
「ただの女房にどうしてこんな立派なことができるのだろう」
と不思議がっている。
中君(なかのきみ)からもお供えがあった。

そもそも不思議なことだらけの法要で、
「いったいどんな女君がお亡くなりになったのだ。薫の君にそういう恋人がいらっしゃるなんて聞いたこともなかった」
という人が世間には多い。
しかも元常陸(ひたち)(かみ)主人(しゅじん)(がお)で法要の会場にいる。
何が何やら分からないけれど、法要の立派さから、薫の君が深くお愛しになった女君だということは分かるの。

守は贅沢(ぜいたく)な法要に驚いている。
娘の出産の祝賀(しゅくが)(かい)も、会場をできるだけ派手に(かざ)りつけて行ったけれど、それとはまったく格が違う。
<あの継娘(ままむすめ)が生きていたら、薫の君の奥様として、私など足元にも(およ)ばないお立場になっていただろう。とてつもなく幸運な人だったのだ>
と守はぞっとする。

それほど愛された女君がいたようだと、ついに(みかど)のお耳にも入った。
正妻(せいさい)(おんな)()(みや)遠慮(えんりょ)して田舎(いなか)(かく)していたのだろう>
と、婿君(むこぎみ)である薫の君を気の毒にお思いになる。
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