この恋、予定外。
「……助かりました」

やっと椅子にもたれて、そのまま隣を見る。
彼はもうパソコンを閉じていて、いつからそうしていたのか私を見ていた。

「これであの後輩に明日、ドヤ顔できるな」

ふふっと私は笑ってしまった。
やっと笑えた。また泣きそうになって、それはこらえる。


「森川」

名前を呼ばれて、はい!と反射で返事する。

「明日、もう一回確認しとけ」

「……はい」

「今日の状態、信用すんな」

「分かりました」

また、少しだけ口元が緩む。
その言い方が、あまりにもいつも通りで。
さっきのことなんて、最初からなかったみたいに扱われるのが、ちょうどよかった。


高橋さんはそれ以上何も言わずに立ち上がる。

「疲れた。帰るぞ」

当たり前みたいに言われて、私は一瞬遅れて、

「……はい」

と席を立つ。

電源を落として、画面を閉じる。
さっきまでの時間が、ゆっくりと後ろに引いていく。


オフィスを出る直前に、少し先を行く高橋さんに声をかけた。

「ありがとうございました!本当に!」

元気に明るく聞こえるように。

振り向いた彼の顔は、また“変なやつ”と言いたげに見えた。


それでも、背中に残っている感触だけは消えなかった。
消そうとしても、消えなかった。
私はそれを確かめないまま、バッグを持って歩き出した。


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