この恋、予定外。
キャッキャしている女性社員たちを横目に、彼がぼそっと言った。

「森川」

「はい?」

「相変わらず女って、こういう時だけは朝っぱらからテンション高いな…」

「そりゃ、女性社員ですから」

私は肩をすくめた。

「化粧品の試作ですよ?」

高橋さんは「だよな」とだけ言って、テーブルの方を見た。


こういうことは何度も経験しているのだろうが、彼にはこのワイワイしている時間は苦痛なのだろう。
組んだ腕から伸びる指先が、ちょっとイライラしているようにリズムを刻んでいる。


その時。

「えっ」
と、声が上がる。


「なにこれ、めっちゃ伸びる!」

「ほんとだ!」

「すごい軽い!」

下地を整えた女性たちがやっとファンデーションを塗り始めた合図だ。
楽しそうな声が飛んでいる。

マーケ部の人が鏡を覗き込みながら言った。

「なんか、思ったよりカバー力あるかも」

「でもちょっと乾燥するような…私だけ?」

「え、そう?」

「いやでもツヤはきれい!」

次々に意見が飛び交う。
私は急いでメモを取りながら、うんうんとうなずく。


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