この恋、予定外。
高橋さんはというと、壁に背をつけたまま腕を組んでいる。ずーっと同じ姿勢。

強いて言うなら、さっきより首がもたれていて、眠そうな顔になっている。目だけが、キョロキョロと試し塗りしている女性たちに向けられていた。

完全に“研究員モード”。
いや、研究員というより、観察者?


女性社員たちの会話が落ち着いたところで、彼が口を開いた。

「で?」

という、低い声。

一瞬、みんなが静かになる。

「崩れやすいのはどこ?」


さっきまでキャッキャしていた人たちが、急に自分の顔を触り始めた。

「えーっと…」

「今はまだ分からないかも」

「昼くらいから勝負どころじゃない?」

「うーん、夕方じゃないと…」

顔を見合せている女性社員たちを見下ろして、高橋さんは小さくうなずいた。

「そうだな」

そしてテーブルの上の資料を指でトントン叩く。

「じゃ、夕方だな」

と、ただそれだけ。
そしてまた黙ってしまった。

…石像かよ。


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