この恋、予定外。
─────ああ、そうか。
そういうことか。そうだよね。
胸の奥が、少しだけ重くなる。

…それでも。

「…たしかに、瑞希さんから聞いてますけど」

気づいたら、口が動いていた。
自分でも、止める前に。
彼に“好きです”と言った、まさに少し前の自分がまた出てきた。

高橋さんが、やっとこちらを見る。目が合った。
また、彼は驚いている。

「だからなんなんですか?」

一瞬、沈黙が訪れた。

言ったあとで、やっと気づく。
…なに言ってるんだろう、今日の私。

だけどここで言わなければ、一生後悔すると思った。

「振り向いてもらえなかったのも、疲れてるのも、分かりますけど」

言葉が、少しだけ早くなる。

「それ、私には関係なくないですか?」

自分で言っておいて、少しだけ息が詰まる。
でもここまで来たら、もう引けない。

「…私が好きって言ったの、さっきですし」

街灯の光が、やけに明るい。

「高橋さんがどう思うかは、高橋さんの自由ですけど」

そこまで言って、ほんの少しだけ視線を逸らす。

「…最初から無理って決められるのは、ちょっと納得いかないです」

静かに、言い切る。
強く言ったつもりはない。
でも、ちゃんと届く声だった。

私と彼の間に、するりと風が通る。


高橋さんは、何も言わない。
ただ、こちらを見ている。


私は、缶コーヒーをひと口飲んだ。
ぬるい。だけど、さっきよりも味が分かる。

「…すみません」

我に返ったわけじゃない。
これは彼の“ごめん”に対する、私の抵抗だ。

「なんか、変なこと言ってるような気もしますけど」

謝る理由もよく分からないまま、言いたいことは言ってしまおう、と勢いに任せる。

「まあ、好きなものは好きなんで」

小さく笑って、そう言った。


足を一歩、踏み出す。
さっきよりも、ちゃんとした足取りで。


今度は私が前を向いた。
もう一度、隣に並ぶために。

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