この恋、予定外。
••┈┈┈┈••
店を出ると、夜の空気がすり抜けていった。
さっきまでの湯気と熱が、一気に引いていく。
少しだけ歩く。
隣にいるはずなのに、距離がさっきより遠く感じる。
自販機の前で、高橋さんが立ち止まった。
「なんか飲むか?」
「あ、はい」
缶コーヒーを二本買って、無言のまま一本を渡される。
「ありがとうございます」
プルタブを開ける音が、やけに大きく響いた。
また歩き出すものの、足音が全然揃わない。
「森川」
呼ばれて、顔を上げる。
「…俺の話、杉本から聞いてるだろ」
高橋さんの表情は、いつもと変わらない。さっきのラーメン屋の出来事は置いてきたみたいに。
「少しだけ、聞きました」
「そうか」
短く返される。
それだけで終わると思ったのに、少し間を置いて、続いた。
「前、好きだった人がいた」
淡々とした声だった。たぶんそれは、本当にもう終わっていることだからだ。
「けっこう長かったけど、振り向いてもらえなかった」
街灯の下で、缶の水滴が光る。
「…まあ、それでちょっと疲れてさ」
話を聞きながらも、彼の視線が前を向いたまま一向にこちらを見ないことが気になっていた。
「しばらく恋愛はいいかなって思ってる」
彼は缶コーヒーをひと口飲んで、やっぱりまた前を向いた。
「金貯めて、独身貴族でいいかなって」
冗談みたいに言う。でも、冗談じゃないのも分かる。
私は、少しだけ黙った。
言葉が、出てこない。
「だから」
その一言で、全部分かる。
終わる、って。
「ごめん」
短く落ちる。
それで、十分すぎるくらい伝わってきた。
店を出ると、夜の空気がすり抜けていった。
さっきまでの湯気と熱が、一気に引いていく。
少しだけ歩く。
隣にいるはずなのに、距離がさっきより遠く感じる。
自販機の前で、高橋さんが立ち止まった。
「なんか飲むか?」
「あ、はい」
缶コーヒーを二本買って、無言のまま一本を渡される。
「ありがとうございます」
プルタブを開ける音が、やけに大きく響いた。
また歩き出すものの、足音が全然揃わない。
「森川」
呼ばれて、顔を上げる。
「…俺の話、杉本から聞いてるだろ」
高橋さんの表情は、いつもと変わらない。さっきのラーメン屋の出来事は置いてきたみたいに。
「少しだけ、聞きました」
「そうか」
短く返される。
それだけで終わると思ったのに、少し間を置いて、続いた。
「前、好きだった人がいた」
淡々とした声だった。たぶんそれは、本当にもう終わっていることだからだ。
「けっこう長かったけど、振り向いてもらえなかった」
街灯の下で、缶の水滴が光る。
「…まあ、それでちょっと疲れてさ」
話を聞きながらも、彼の視線が前を向いたまま一向にこちらを見ないことが気になっていた。
「しばらく恋愛はいいかなって思ってる」
彼は缶コーヒーをひと口飲んで、やっぱりまた前を向いた。
「金貯めて、独身貴族でいいかなって」
冗談みたいに言う。でも、冗談じゃないのも分かる。
私は、少しだけ黙った。
言葉が、出てこない。
「だから」
その一言で、全部分かる。
終わる、って。
「ごめん」
短く落ちる。
それで、十分すぎるくらい伝わってきた。