この恋、予定外。
ほんの少しだけ、息を吐いた。
昨日の研究室でのやり取りが、頭をよぎる。
あの人なら、たぶんここで削る。

余計な言葉を、全部。


逆に─────
パソコンの画面上にたくさん並ぶ、テンプレみたいな文言。

売れ筋のファンデによく使われる言葉も、組み合わせ次第では台無しになるし、あるいはとんでもない破壊力を持つ言葉になる。
売れるか売れないかの差が、ここで出たりする。

ここは切る。

根拠はないのに、妙にしっくりくる。
そういう感覚が、少しだけ悔しい。

キーボードに指を戻して、打ち直した。

言葉が、さっきよりもちゃんと並ぶ。


─────仕事だ。
そう思えば、全部整理がつく。

試作をもらって、試して、フィードバックする。
それだけの関係。それだけでいい、はずなのに。

ふと、手が止まる。
画面に映る文字が、少しだけぼやけた。
理由は分かっている。


どうしたって考えてしまう、あのときのこと。

ラーメン屋の湯気。
言ってしまった言葉。
そのあとの、あの空気。

…まあ、いいか。


ため息とは違う息をついて、背もたれに体を預ける。
考えたところで、どうにもならない。
普通にする。
それでいい。

そう決めて、もう一度画面に向き直った。


< 143 / 180 >

この作品をシェア

pagetop