この恋、予定外。
ここでひと区切りつく、という実感が、思っていた以上に自分の中に重く残っていた。

このプロジェクトが終わる。
そうなると、これまで当たり前みたいに続いていたやり取りも、少しずつ形を変えていくのかもしれない。


─────そこまで考えて、私は小さく息をついた。
いま考えるべきは、そこじゃない。


資料に視線を戻して、スライドの最初にカーソルを戻す。
“軽いのに、ちゃんと残る”。
画面に浮かんだその一文を見た瞬間、昨日のやり取りが不意に頭をよぎった。


『……見てる』

高橋さんのあのときの声は、思った以上に輪郭を保ったまま、まだどこかに残っている。


振り払うようにマウスを動かし、資料を閉じる。
椅子から立ち上がると、キャスターが床をわずかに鳴らした。

その音でようやく、思考が現実に引き戻される。
資料を手に取り、指先で揃えながら深く息を吸う。


今日で、形になる。
それでいい。それ以上は、考えなくていい。

そうやって、自分の中で線を引くようにして、私は会議室へ向かって歩き出した。




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