この恋、予定外。

••┈┈┈┈••

昼休みが終わる少し前。

私は誰もいない化粧室の鏡の前に立っていた。
白い照明の下で、自分の顔をじっと見る。


─────あれ?
思ったよりも、崩れてない。

頬に軽く触れる。

粉浮きしていない。
小鼻も、いつもの夕方みたいなテカり方はしていない。

「…ほんとだ。すごい」

思わず小さくつぶやいてしまった。

普段ならもうお昼近くには崩れ始めたりするはずなのに。
色々な角度から鏡で自分の顔を確認していると、不意に背後から低い声。

「森川」

びくっと肩が跳ねる。

振り向いた瞬間、私は固まった。


化粧室の入口の壁に背を預けて立っていたのは─────
高橋さんだった。


「ッギャァァァ!!!!!」

害虫を見つけた時みたいな声が出てしまった。
とっさに慌てて口を手で押さえる。

…ちょっと待って。
そんなホラー展開、いらないんだってば。
前にも言ったじゃん。

ていうかここ女子トイレ。
なんで入ってきてるの、この人?

しかも、私の悲鳴を聞いてもなにも反応しない。


「…は?」

この異常事態に思わず眉を寄せる。

「ちょっと待ってください、高橋さん!」

高橋さんは腕を組んだまま、こちらを見ている。

「なにが?」

いや、“なにが?”じゃないのよ。

「ここ、女子トイレですよ!?」

「知ってる」

「知ってるならなんで入ってくるんですか!変態じゃん!」

「いや、確認」

「確認!?」

< 16 / 180 >

この作品をシェア

pagetop