この恋、予定外。
あまりにも意味が分からなすぎて、思わず声を上げた。

「普通入ってきます!?女子トイレですよ!?」

私のあまりの剣幕に、高橋さんは一瞬だけ考える顔をした。彼の脳内は、どうなってんの?
もはや理解する気にもなれなかった。

彼は平然と首をかしげる。

「森川いるから」

「だから、女子トイレなんですって!ダメなんです!」

話が通じなくて、頭が痛くなってきた。
額を押さえてしまった。

この人、本当に。
人の心あるんか?絶対ないじゃん!


高橋さんはまったく気にしていない様子で、指で鏡を指す。

「顔」

「はい?」

「この間、言ってただろ。営業は顔が動くって」

私は口を開きかけて、閉じた。

彼、絶対にこのまま女子トイレでこの話を続ける気だ。
今ここに誰か入ってきても、絶対なんとも思わない。

現に高橋さんは淡々と続ける。

「はい、動かしてー」

「え?ここで?」

「今じゃなきゃいつなんだよ」

「女子トイレで!?」

「問題ない。早くしろ」

「問題あります!!」


しかし、高橋さんの表情はなんにも変わらない。
これはたぶん、このまま抗議しても動かないとみた。

私は諦めて鏡を振り返る。
営業としての意地もある。


「ほら、やってみ」

高橋さんの背後からの圧がすごい。

私は仕方なく口角を上げた。
ザ、営業スマイル。

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