この恋、予定外。
ふと視線を感じて振り返る。

ベンチに、誰か座っている。
黒い紙製のコーヒーカップ。
長い脚を組んでいた。

着崩したスーツに、緩いネクタイ。
そして見覚えのある仏頂面。


私は思わず立ち止まる。

「……え?」

驚きと戸惑いで、動けなかった。

「高橋さん!?」

ベンチに座っていた本人が、うんざりしたような顔で手を上げた。

「朝からでかい声出すなよ、森川」

いつもと同じ、低くてやる気のない声。


私は反射的に自分の格好を見下ろした。

ランニングウェア。
ポニーテール。
汗。
当然ノーメイク。

…なんでこの人に見られてるの。


「こんな時間に何してるんですか?」

高橋さんは少し考えてから、コーヒーを口に運ぶ。

「特に理由はない。朝の方が静かだから」

「え?どういうことですか?」

「俺、基本朝型だから。散歩」

「散歩!?似合わない!」

思ったことをつい言ってしまい、彼のギロリとした睨みが怖いといったら。


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