この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

朝のオフィス。
いつもと同じ、いつもの光景。

パソコンの起動音。 キーボードを叩く音。 誰かの小さなくしゃみ。

全部、いつも通り。


私は席につきながら、ノートパソコンを開いた。

画面を立ち上げ、メールを確認する。
今日のスケジュールをざっと見る。
問題なし。


なにも滞りない、はずなのに。

なぜか、少しだけ集中できない。


私は小さく息を吐いて、カーソルを動かした。

外回りの準備、資料の確認、今日回る店舗のリスト。
やることは山ほどある。
分かっているが、思考がどこか滑る。


手が止まりかけて、私は慌ててキーボードに置く手を見下ろした。
─────違う違う。 今は仕事。


「茉央、おはよう」

顔を上げると、瑞希さんがコーヒー片手に立っていた。顔にはいつもの、やわらかい笑み。
私も数年後には、この余裕を持てるだろうか。

「瑞希さん、おはようございます!」

「今日も外?」

「はい。午前中から回ります」

「そっか。気をつけてね」

彼女は何の気なしに言った言葉だと思う。だけどその一言に、私は一瞬だけ反応が遅れた。

「…あ、はい」

瑞希さんが少しだけ首をかしげる。

「どうしたの?眠い?」

「え?」

「ぼーっとしてる」

私は慌てて首を振った。

「いやいや!してません!朝ランしてきたんで、なんなら元気チャージ済です!」

言い切ったあとで、自分でも少し怪しいと思った。

瑞希さんはふっと笑う。なにも話していないのに、この人は知ってるような顔をする。

「まあいいけど。無理しないでね」

「してないですってばぁ」

「はいはい」

先輩に軽くあしらわれて、私は口を尖らせながらパソコンに向き直る。


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