この恋、予定外。
すると、違う方向から
「森川」
と呼ばれて、心臓が一瞬だけ跳ねた。
…なんで、声だけでこんななんだ?
喉の奥が、ほんの少しだけ詰まる。
ゆっくり振り向くと、そこに立っていたのはいつも通りの高橋さんだった。
呼ばれた時点で声の主が彼なのは分かってはいたが。
「はい、これ」
無造作に差し出される、分厚いファイル。
「昨日の続き。売り場、ここで詰める」
私はそれを受け取りながら、なぜかすぐに声が出なかった。
「…あぁ、はい」
歯切れの悪い、遅れた返事。
高橋さんは特に気にした様子もなく、続ける。
「午前中の外回り、終わったら声かけて」
いつも通りの指示。 いつも通りの声。
彼はなにも変わらない。変なのは私だけだ。
変わっていないはずなのに、 昨日までと同じ場所に立っているはずなのに。
どうしてこんなに、距離の測り方が分からないのだろう。
私はファイルを見たまま、少しだけ黙った。
「森川?」
名前を呼ばれて、はっとする。
「あ、はい!」
今度は少しだけ声が大きくなってしまった。
この反応に、高橋さんが一瞬だけ眉を動かす。
「朝から元気だな」
その一言で、私は完全に我に返った。
「…すみません」
視線を逸らす。
なんだろう。この人、こんなだったっけ。
いや、違う。変わってない。
変わってないのに─────。
私は深呼吸して、自分を整える。
「外回り、行ってきます」
そう言って立ち上がると、なぜかさっきより少しだけ足が重かった。
「森川」
と呼ばれて、心臓が一瞬だけ跳ねた。
…なんで、声だけでこんななんだ?
喉の奥が、ほんの少しだけ詰まる。
ゆっくり振り向くと、そこに立っていたのはいつも通りの高橋さんだった。
呼ばれた時点で声の主が彼なのは分かってはいたが。
「はい、これ」
無造作に差し出される、分厚いファイル。
「昨日の続き。売り場、ここで詰める」
私はそれを受け取りながら、なぜかすぐに声が出なかった。
「…あぁ、はい」
歯切れの悪い、遅れた返事。
高橋さんは特に気にした様子もなく、続ける。
「午前中の外回り、終わったら声かけて」
いつも通りの指示。 いつも通りの声。
彼はなにも変わらない。変なのは私だけだ。
変わっていないはずなのに、 昨日までと同じ場所に立っているはずなのに。
どうしてこんなに、距離の測り方が分からないのだろう。
私はファイルを見たまま、少しだけ黙った。
「森川?」
名前を呼ばれて、はっとする。
「あ、はい!」
今度は少しだけ声が大きくなってしまった。
この反応に、高橋さんが一瞬だけ眉を動かす。
「朝から元気だな」
その一言で、私は完全に我に返った。
「…すみません」
視線を逸らす。
なんだろう。この人、こんなだったっけ。
いや、違う。変わってない。
変わってないのに─────。
私は深呼吸して、自分を整える。
「外回り、行ってきます」
そう言って立ち上がると、なぜかさっきより少しだけ足が重かった。