この恋、予定外。
思ったよりも普通に言われたものだから、こちらも拍子抜けしてしまった。
「そうならそうと、もうちょっと明るく、やさしく、分かりやすく言ってください」
「え、それはめんどくさい。要求が多いな」
いつもの調子。
あー言えばこー言うスタイル。慣れっこになってしまった私も私だけど。
「私は、やりやすかったです」
言ってから、自分で一瞬だけ止まる。
するりと、言葉が出てしまった。
─────今、なに言った?
なんとなく恥ずかしくなる。
「は?」
あっちも想定外だったのか、驚いたような低い声が落ちる。
「私はね、高橋さんとは違うんですよ」
とっさに言い返す。
「ちゃんと思ったことは言葉にするんです。そういうタイプなんで」
そう、それがいつもの私だ、たぶん。
高橋さんは面白そうに一瞬だけこちらを見て、ふと口元に笑みを浮かべた。
「…そうだな」
と、それだけ言って歩くペースを上げた。
「ちょっと、待ってくださいよ」
私は慌ててその背中を追う。
気を抜くと数歩で距離が開いてしまう。
「高橋さん」
呼ぶと、顔が半分だけ振り返る。
なに?と言いたげな目をして。
「さっさと行くの、やめてください」
「え?」
「一緒に歩くなら、ちゃんと相手に合わせるもんですよ」
一瞬だけ、間。
高橋さんは何かを考えるように黙ってから、
「…そういうもん?」
と、首をかしげる。
そして、彼の歩くペースがすぐにほんの少しだけ落ちる。
私はその隣に並んだ。
さっきまでより、少しだけ自然に。
なにか言葉を探そうとしたけれど、いいのが思い浮かばない。
噛み合ったとか、歯車が合ったとか。
そういうのとも、少し違う。
結局、言葉にできない“なにか”を飲み込む。
横を見ると、高橋さんがいる。
もう先を歩いたりはしない。
ただ彼はいつも通り、何も変わらない顔で前を見ている。
さっきの店のことも。
今の会話のことも。
たぶん、もう終わっているみたいに。
仕事はやりやすいのに、仕事が外れるとやりづらい。
その理由だけが、どうしても分からなかった。
「…おかしいな」
と、彼に聞こえないくらいの声で小さくこぼす。
歩幅は、もう揃っているのに。
私はそのことに、気づかないふりをしたまま歩いた。
「そうならそうと、もうちょっと明るく、やさしく、分かりやすく言ってください」
「え、それはめんどくさい。要求が多いな」
いつもの調子。
あー言えばこー言うスタイル。慣れっこになってしまった私も私だけど。
「私は、やりやすかったです」
言ってから、自分で一瞬だけ止まる。
するりと、言葉が出てしまった。
─────今、なに言った?
なんとなく恥ずかしくなる。
「は?」
あっちも想定外だったのか、驚いたような低い声が落ちる。
「私はね、高橋さんとは違うんですよ」
とっさに言い返す。
「ちゃんと思ったことは言葉にするんです。そういうタイプなんで」
そう、それがいつもの私だ、たぶん。
高橋さんは面白そうに一瞬だけこちらを見て、ふと口元に笑みを浮かべた。
「…そうだな」
と、それだけ言って歩くペースを上げた。
「ちょっと、待ってくださいよ」
私は慌ててその背中を追う。
気を抜くと数歩で距離が開いてしまう。
「高橋さん」
呼ぶと、顔が半分だけ振り返る。
なに?と言いたげな目をして。
「さっさと行くの、やめてください」
「え?」
「一緒に歩くなら、ちゃんと相手に合わせるもんですよ」
一瞬だけ、間。
高橋さんは何かを考えるように黙ってから、
「…そういうもん?」
と、首をかしげる。
そして、彼の歩くペースがすぐにほんの少しだけ落ちる。
私はその隣に並んだ。
さっきまでより、少しだけ自然に。
なにか言葉を探そうとしたけれど、いいのが思い浮かばない。
噛み合ったとか、歯車が合ったとか。
そういうのとも、少し違う。
結局、言葉にできない“なにか”を飲み込む。
横を見ると、高橋さんがいる。
もう先を歩いたりはしない。
ただ彼はいつも通り、何も変わらない顔で前を見ている。
さっきの店のことも。
今の会話のことも。
たぶん、もう終わっているみたいに。
仕事はやりやすいのに、仕事が外れるとやりづらい。
その理由だけが、どうしても分からなかった。
「…おかしいな」
と、彼に聞こえないくらいの声で小さくこぼす。
歩幅は、もう揃っているのに。
私はそのことに、気づかないふりをしたまま歩いた。