この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

お店を出ると、ふわりとした外の空気が、少しだけ生ぬるかった。
さっきまでの賑やかさが嘘みたいに、通りは落ち着いている。


私は小さく息を吐く。
うまくいった。そのはずなのに。

視線の端に、高橋さんがいる。
さっきと同じ距離。


─────なんか、やりやすかった。
私はふと、そう思ってしまった。


『ここ、触られてるけど売れてませんね』

さっきの彼のこの一言がなかったら、どうなっていたか。もしかしたら、もっと時間がかかっていたかもしれない。

あの時はタイミングが合った、というか。
言葉を拾われた、というか。


「……はあ」

無意識に小さく息をつく。
気づかないうちに、少し力が入っていたらしい。

「疲れたか?」

隣から落ちてきた声に、私は顔を上げた。

「いえ、大丈夫です!いつも通りです」

反射的に返したものの、緊張感は簡単に見抜かれていたと思うと、それも悔しい。
バッグの持ち手を握り直す。

高橋さんはそこに関してはそれ以上は何も言わず、前を向いたまま歩いている。


数歩分の距離、いつも先を歩く人だ。
近すぎず、遠すぎず、距離を置く。

「さっきの店」

ぼそっと高橋さんが言ったので、急いで彼に追いつく。

「はい」

「よかったと思う」

私は少しだけ不満をあらわにしてみた。

「それ、褒めてます?」

「褒めてる」

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