この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

開発の人たちを見かけない日が、数日続いた。

別に、珍しいことではない。
営業フロアと開発のエリアは離れているし、もともと頻繁に顔を合わせるわけでもない。


─────それでも。

「……」

私はキーボードを打つ手を止めた。

画面に映る売り場の写真。
価格帯、テスターの減り、什器の幅。

全部、ちゃんと見えている。
見えているはずなのに。

どこか、引っかかる。


「……なんだろう」

言いかけて、やめる。
何が引っかかっているのか、うまく言えない。
言葉にしようとすると、逆にぼやける気がした。


指先が止まったまま、数秒。
私は小さく息を吐いて、もう一度キーボードに手を戻す。


考えなくていい。今は、仕事。


「森川」

呼ばれて、反射的に顔を上げる。

…一瞬だけ。胸の奥が、ほんの少しだけ先に動いた。

でも、違う。声が違う。
あの低い声じゃなかった。

視界に入ったのは、ホワイトボードの予定表を見てい
る男性先輩の石田さんだった。
たぶん、瑞希さんより一、二年くらい上だった気がする。


「今日の“アトリエ・ヒュー”、ちょっと目厳しいとこだからさ」

軽く指で示される。

「最初だけ俺が出るけど、そのあと森川に任せるよ。桐山課長に頼まれてるんだ」

「分かりました。お願いします」


私はいつも通りの元気な声でうなずいて見せた。
さっきの感覚を、なかったことにするみたいに。


ただひとつ。
ほんの少しだけ遅れて、胸の奥に残る違和感だけは、どうしても消えなかった。




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