この恋、予定外。
桐山課長はトントンと指で電子タバコのグリップを軽く叩きながら、首をかしげた。

「無理…とは?」

「分かってますよね!さっきだってそうでしたよ!なんていうんだろう…威圧的!」

「ほう」

「あと、目つき」

「目つき?」

「悪いでしょう?スナイパーみたい!」

桐山課長はようやく顔を上げた。

「それだけか?」

「それだけじゃないです」

私は少し身を乗り出す。

「怖い!」

課長の眉が少しだけ動く。
あとひと押しで気持ちが変わってくれるかもしれない!
意気込んで前のめりになった。

「怖いんですよ、あの人!絶っっっ対に無理です!」


数秒の沈黙。

こちらは言ってやった感。
しかし、桐山課長は深くて重いため息をついた。

「森川。そんなやつ、この世の中にごまんといる。これまでも営業先でたくさん見てきただろ?」

私は口を閉じる。
言い返してこないのをいいことに、課長は笑って肩をすくめた。

「社会ってのはな、怖いやつと仕事してナンボなんだよ」

「ひどい!!」

課長はアハハと乾いた笑い声を上げた。

「大丈夫だって。なんとかなるよ。高橋くん、あれで優秀だから。─────ね?高橋くん」


“ね?高橋くん”???


課長の視線は、私には向いていなかった。
私を通り越して、私の背後を見ている。


…待って。そんなホラー展開、いらない。


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