姫様は好きが言えない〜オーク顔の呪いにかかっていますが好きな人がいます〜
「はあ、せめてミニブタに変身する呪いだったら良かったのに」
嘆息をもらしていると、マルティナが口元に手を置いて小声で言う。
「姫様、ミニブタはミニサイズのブタじゃないので別に可愛くないですよ?」
「それくらい私も知っていてよ? でも、オーク顔の醜女よりミニブタの方が愛嬌あると思わない?」
「いひゃい、いひゃいです姫しゃま」
減らず口を叩くマルティナの頬を引っ張っていたら、扉を叩く音がした。
どうせ他の侍女がお茶を持ってきてくれたのだろう。
「お茶ならそこの机の上に置いておいて」
振り返りもせずにマルティナへの攻撃を続けていたら、予想外の声がした。
「ジゼル様、おはようございます」
落ち着いた男性らしい声。驚いた私は肩越しに振り返る。
すると、見上げるほどの位置に美丈夫な顔があった。
銀髪の前髪を後ろへ撫でつけてはいるが、額に数本はらりと落ちて朱色の瞳にかかっている。
精悍さと甘さを兼ね備えたその顔を見た途端、私の心臓がギュンッと高鳴った。
「あ……」
後ろにいたのは私の護衛騎士、イーサン・ロシュ。
西の辺境地を治める有力貴族、ロシュ辺境伯の息子だ。
イーサンは私が十歳の時に護衛騎士になった。五つ年上で、当時は騎士叙任式を終えたばかりだったが、騎士団長にその腕を見込まれて任命されたのだ。