零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
入学式が終了すると、退場の合図が出た。
列の移動まで細かく決まっていて、前のやつとの間隔は腕一本分、歩幅を乱すな、立ち止まるな、と次から次へ指示が飛んだ。
全員が退場し終わると、中庭で班分けの掲示があると言われた。

「軍隊かよ……」

つい口に出た。

「そこまではいかないよ」

横から不意に声がして、俺ははっとした。
回廊の角に、見知らぬ上級生が立っていた。

背が高くて、制服の着方がやたらきれいで、胸の学年章には二年を示す銀線が入っている。顔立ちは整ってるのに嫌味じゃなくて、話しかけやすい感じだった。

先輩は笑った。

「中庭はこっち」

「あ、ありがとうございます。あの、俺、有馬直です」

「秋月柊真。二年A班」

名前までちゃんとしてそうだった。
秋月先輩は俺の曲がっていた胸章を指先で直してくれた。

「廊下では白線の内側を歩いたほうが怒られにくいよ」

「怒られにくい歩き方まであるんですか」

「ある。ここ、そういう学校だから」

そう言って秋月先輩は軽く手を振った。

「じゃ、また。掲示、もう始まるよ」

「ありがとうございました!」
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