零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
朝食をかきこんで一限に入ると、観察基礎はさらにひどかった。

教室の真ん中の机に、時計、万年筆、切手、古い鍵、トランプ、ティーカップ、マッチ箱、懐中電灯、封蝋、銀色のボタン――とにかくごちゃごちゃ物が並べられていた。

篠宮教官が言った。

「十五秒だ。見ろ」

「十五!?」

「文句があるなら十秒にする」

「ありません!」

白鷺の返事が速すぎた。

十五秒後、布がばさっとかけられて、俺たちは別の紙を配られた。

「配置、色、傷、数を答えろ」

「傷まで!?」

火村がうれしそうに身を乗り出した。

「待って、それ最高」

「お前の最高の基準がわからない」

俺はなんとか思い出そうとした。鍵は左端。トランプは赤い裏。ティーカップの取っ手は右。いや、待て、欠けてたのはどっちだ。

九条は迷いなく書いている。白鷺は宙を見るみたいにして、何かを頭の中で再生していた。火村は「懐中電灯のネジ山が」とかぶつぶつ言ってるし、大河内は眉間にしわを寄せて、本気で世界の終わりみたいな顔になっていた。

答え合わせになると、九条はほぼ満点だった。

白鷺は色と位置は強いのに、数で二つ落としていた。

火村は半分くらいしか当たってないくせに、「でも鍵の型番は合ってた」と胸を張っていた。

大河内は五問目で力尽きていた。

俺は八割くらいだった。

「有馬、意外と悪くない」

九条が言った。

「だからその“意外と”やめろ」

「本当に意外だから仕方ない」

「言い直しても失礼なんだよ!」

篠宮教官は俺の答案を見て言った。

「位置の記憶が強いな」

「たぶん、棚を見る癖です」

「射的屋か」

「はい」

「ものを“並び”で覚えるのは悪くない。抽象語にも応用しろ」

言われた意味が、そのあとすぐわかった。
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