零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
二限の記憶法は、もっと容赦がなかった。

黒板いっぱいに、意味のない単語と数字と記号が並んだ。鳩時計、七、青い鍵、二一、雨、△、燭台、九、銀貨、×――途中から何を覚えさせられてるのかもわからなくなった。

「三分後に消す。順番通りに再現しろ」

「嫌がらせですか」

俺が言うと、篠宮教官は即答した。

「訓練だ」

「言い換えただけじゃないですか」

白鷺は笑った。

九条はもう目を閉じていた。なんだこいつ、頭の中に黒板でもあるのか。

俺は無理やり、景品棚を思い浮かべた。いちばん上に鳩時計、その横に七、下段に青い鍵、右端に二一。意味のないものを無理やり並べると、少しだけ見えやすくなった。

結果、九条はまたほぼ満点だった。

白鷺は人の顔や服なら強いのに、数字だけ妙に弱かった。

火村は途中から勝手に機械の部品に変換していて、もはや別問題になっていた。

大河内は半分を越えたところで「九……の次……」と低くうなっていた。

俺はぎりぎり及第点だった。

「よし」

思わず小さく言ったら、白鷺がのぞきこんできた。

「お、やるじゃん。有馬、何したの?」

「景品棚に置いた」

「発想が実家すぎる」

九条が淡々と言った。

「それで覚えられるなら正解だ」

「お前、そういうときだけちょっと優しいな」

「気のせいだ」
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