零班は落第寸前!――名門男子校は秘密のスパイ養成学校でした――
壇上に校長が現れると、講堂の空気がすっと冷えた気がした。

校長は、新入生全体をゆっくり見回してから口を開いた。

「諸君。今日一日で、いくつかの者は疑っただろう。観察、記憶、暗号、虚実、変装、移動、射撃。これらが、果たして普通の中等教育かと」

後ろのほうで、ごく小さく誰かが息をのんだ。

俺は黙って壇上を見た。白鷺は妙に楽しそうだし、九条は少しも驚いていない顔で、火村はわくわくしてるし、大河内は無言のまままばたきも少ない。

「よろしい。疑問を持つのは健全だ。むしろ遅いくらいだ」

校長は笑っているのに、ぞくっとする声で言った。

「この学校は、表向きはエリート校、だが実態はスパイ養成学校だ」

講堂が一瞬、完全に凍った。

俺の頭の中では、「やっぱり」と「やっぱりで済ませるな」が正面衝突していた。

次の瞬間、校長はまるで宿題でも出すみたいな調子で告げた。

「今夜、校長室の赤い封筒を盗め」
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