人形姫と秘密のお役目 -1-

友達

 ──キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴った瞬間、教室の空気が一気に緩んでいくのが分かった。

 張りつめていた静けさがほどけるように、あちこちで椅子を引く音や机に寄りかかる気配が重なり、さっきまでとはまるで別の場所のようなざわめきが広がっていく。

 私はそのまま席に座ったまま、人形を抱え直した。

 腕の中に収まる柔らかな感触と、わずかに感じる重み。そのどちらも、ここ数日で何度も確かめたはずなのに、無意識のうちにまた確かめるように、指先に少しだけ力が入る。

 問題はない。形も、感触も、繋がりも。今はすべて、元通りのはずだった。

 それでも、周囲から向けられる視線だけは、どうしても避けられない。

 ちらり、と向けられては逸らされる気配。遠慮がちな好奇心と、少しの戸惑いが混じったような空気。


「……人形?」

「ずっと持ってるよね、あれ」


 ひそひそと交わされる声が、断片的に耳に届く。
< 24 / 28 >

この作品をシェア

pagetop