人形姫と秘密のお役目 -1-
 そこで、ふと口が動く。


「……朝比奈っていう名字。初めて聞いた」


 自分から言葉を出したことに、わずかな違和感があった。


「でしょ? 私もあんまり聞かないんだ〜」


 楽しそうというより、どこか軽やかに受け止めるような返事。


「なんか、ちょっと珍しいらしいよ。たまに覚えてもらいやすいんだよね」

「……そう」

「でもまあ、普通だよ」


 特別扱いされることに慣れているわけでも、気にしているわけでもない、そんな言い方だった。

 会話がふっと途切れる。

 それでも、沈黙が重くなることはない。無理に続けようとしない分だけ、かえって自然に流れていく。


「……えっと、邪魔してた?」


 少しだけ遠慮がちな声。


「……別に」


 答えると、その空気はそれで十分だった。


「そっか」


 柔らかく笑う気配。


「じゃあ、また話しかけてもいい?」

「……いいよ」


 さっきと同じように、そっけなく返す。
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