人形姫と秘密のお役目 -1-
 けれど、その響きは、さっきよりもわずかに親しみが含まれた気がした。


「うん。じゃあまたね」


 足音が離れていく。

 教室のざわめきの中に、その気配はすぐに溶けていった。

 私はもう一度、人形を抱き直す。

 腕の中にある重さも、指先に伝わる感触も、何ひとつ変わってはいないはずなのに、さっきまでとはほんの少しだけ、空気の質が違っているように思えた。


(……騒がしくは、なかった)


 そう思う。

 ただそれだけのことなのに、なぜか、その感覚が静かに残った。
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