人形姫と秘密のお役目 -1-
第壱章
その目の代償
一つの部屋に、かすかな衣擦れの音だけが響いていた。
私は人形を前に置き、ゆっくりと息を整える。
細く伸ばした霊力を、指先からそっと絡めるように繋げると人形の腕が、わずかに持ち上がった。
「……もう少し」
小さく呟きながら、さらに力を込める。
ぎこちない動きだった腕は、次第に滑らかさを帯び、やがて本物の生き物のように、自然に動き出した。
人形が一歩、歩く。
続いて、もう一歩。
足音はない。
けれど確かに、そこに“存在”している。
(まだ、完全ではないけれど)
視界を預けるには、少しだけ不安定だ。
距離も、角度も、ほんのわずかにずれる。
それでも、直接“視る”よりは、ずっといい。
そのときだった。
「……あれ」
私は動きを止め、外へ意識を向ける。
距離はあるが、東の方向から嫌な気配がしたからだ。
人形越しに外を見れば空が暗く“アレ”が本格的に活動し始めるのには十分な時間帯になっていた。
私は人形を前に置き、ゆっくりと息を整える。
細く伸ばした霊力を、指先からそっと絡めるように繋げると人形の腕が、わずかに持ち上がった。
「……もう少し」
小さく呟きながら、さらに力を込める。
ぎこちない動きだった腕は、次第に滑らかさを帯び、やがて本物の生き物のように、自然に動き出した。
人形が一歩、歩く。
続いて、もう一歩。
足音はない。
けれど確かに、そこに“存在”している。
(まだ、完全ではないけれど)
視界を預けるには、少しだけ不安定だ。
距離も、角度も、ほんのわずかにずれる。
それでも、直接“視る”よりは、ずっといい。
そのときだった。
「……あれ」
私は動きを止め、外へ意識を向ける。
距離はあるが、東の方向から嫌な気配がしたからだ。
人形越しに外を見れば空が暗く“アレ”が本格的に活動し始めるのには十分な時間帯になっていた。