人形姫と秘密のお役目 -1-
 あんな刺さり方をする方が難しい。

 普通なら、床に当たった時点で弾かれる。

 あそこまで深く入るなんてありえない。

 しかも、あの子の細い腕でそんな馬鹿げた力が出るようには見えない。

 なのに、現実に起こった。

 あの子は周囲の様子を横目に、近くの生徒から新しいラケットを受け取っていた。

 けれど、すぐには構えない。

 ラケットを手にしたまま、その場で静かに立ち尽くしていた。

 そして、ゆっくりと周囲へ顔を向ける。

 右へ左へ、まるで何かを探すように体育館の中を見渡していく。

 その表情が、ほんのわずかに険しくなった気がした。

 さっきまでの無表情とは違う。

 何かを見つけたような、あるいは、何かを確かめたような顔。


(……なんだ?)


 胸の奥がざわつく。

 あの子はいったい何を見て、何を探っている。

 俺には分からない。

 けれど少女がこちらの方を振り向いた瞬間、俺は息の仕方を忘れてしまった。閉じていたまぶたを開けていたからだ。
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