人形姫と秘密のお役目 -1-
 覗いた瞳は、深く透き通った赤。

 宝石みたいに鮮やかで、それでいてどこか妖しい光を宿した瞳だった。

 その赤を見た瞬間、心臓が大きく跳ねる。

 暗闇の中で、一瞬だけ灯った赤。

 必死に伸ばした手の先で、何も告げずに自分を救ってくれた小さな背中。

 そして、二週間前。

 再び自分を助けた、あの少女の残像。

 記憶の中でぼやけていた光景が、一気に輪郭を持ち始める。


(……まさか)


 でもそんなはずがない。

 彼女は俺と同じ陰陽師のはずだ。毎月ある会議では、本家へほかの陰陽師たちが集まって報告会をする。そのなかに彼女の姿は見当たらなかった。

 でも、あの赤だけは忘れるはずがなかった。

 向こう側でラケットを構えていた女子がシャトルを手に取り、試合を再開させる。


「……じゃあ、行くわよ」


 軽く打ち上げられた白い羽が、ふわりと宙へ舞ったそのとき、あの子が纏う空気が変わった気がした。
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