人形姫と秘密のお役目 -1-
 表情は薄いままなのに、どこか張り詰めている。

 全神経を一点へ集中させているような、研ぎ澄まされた空気。

 同じ人のはずなのに、別人みたいだった。

 そして、ラケットをギュッと握り込んだかと思うとラケットに霊力が宿った気がした。……彼女は陰陽師でもないはずなのに。

 ラケットが放たれたシャトルに触れたその一瞬でシャトルにも流れ込んだかのように霊力が移る。


(……っ)


 思わず目を見開く。

 淡く、けれど確かに感じる力の流れ。

 陰陽師じゃなければ気づけないくらい微かなもの。

 けれど俺には分かった。

 あの子は今、霊力を使った。

 打ち返されたシャトルは、相手のいない場所へ飛んでいく。

 明らかなミスショット。

 ……なのに、不思議だった。

 霊力を含んだシャトルがが空間を切った瞬間、ほんのわずかに体育館の空気が澄んだ。


(……何だ、今の)


 錯覚じゃない。

 確かに、一瞬だけ空気が軽くなった。
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