幼なじみの凪が今日も全然凪いでない

航海

水族館デート(?)当日。
航が、時間になって凪の家に迎えにいくと、
「おはよう…パパ…。」
パジャマ姿の寝ぼけた凪が航のことをパパと言ってしまった。航は戸惑いながらも、
「今日、水族館に行く日だぞ。」
と、言った。その声を聞いて、凪は航だと気づいた。
「わっ航さん!?でしたか…。」
恥ずかしそうに下を向いた。
凪は昨夜、水族館に行くことが楽しみすぎて、なかなか眠れなかったので、朝6時に起きようとはりきっていたものの、眠気に負けてしまったのだ。
「い、急いで準備します!」
焦ってメガネを逆向きに掛けてしまう凪を見て、航は「こっちにおいで。」
といって凪のメガネをかけ直してあげた。
「あ、ありがとうございます!」
そうして、階段を駆け上がっていく凪の足音が聞こえて、凪は自分の部屋で着替えた。
10分後、凪はいつもに比べおしゃれな服を着てきた。
だが、髪の毛はボサボサだった。
航は凪らしいなとはおもいつつこのまま出発する訳にはいかないので、
「髪の毛はそれでいいのか?」
と、聞いてみた。
凪が玄関の鏡を見てびっくりする。そして、恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「ご、ごめんなさい。」
そんな凪が可愛くて、
「髪の毛俺が結んでやる。」
と、航が言った。
「え、いいんですか!?」
嬉しそうに凪が言った。小さい頃に凪はよく、航に髪を結んでもらっていたから、久しぶりにしばってもらうことが嬉しかった。
凪が航に手招きをした。
「おじゃまします。」
いつもは凪のお母さんの返事が帰ってくるが、今日は来ない。気になって航が聞いてみる。
「今日はお母さんいないのか?」
「今日は朝早くから仕事に行っています。」
洗面台のところまできて、凪が航にくしを渡した。
航が器用にいつもの三つ編みではなくポニーテールでしばった。
ふと、凪の顔を見ようと思って航が、鏡を見ると鏡を通して凪と目があった。航は恥ずかしくなって目をそらす。
「鏡の中の航さんと目があってしまいました。」
面白そうに凪が言ったが、航にとっては顔が熱くなっただけだった。
「終わったぞ。」
「ありがとうございます!」
結局、予定より30分遅れで出発する。
駅までは歩きで10分かかる。
「今日の服、かわいいな。」
ふと、思ったことを口にしてしまった航。これまでは思っていても口にしたことはなかった。
「か、かわいい!?」
凪がびっくりして、照れて顔を赤くする。
航も、少し遅れて気づいて、恥ずかしくなって顔を赤くする。
駅に着くまでは、気まずくて二人とも黙っていた。
「凪、切符は持ってきたんだよな?」
駅について航が話しかける。
「はい!航さんのもちゃんともってきまし…ないです。」
かばんの上の方にいれたはずの切符がなくて、焦ってかばんをあさる凪。だが、切符は見つからなかった。
「もしかしたら、リビングの机の上かもしれないです。そ、それとも、本棚の上…。いや、玄関の床?」
泣きそうな凪を見て、航は切り札を出す。
「そうなると思って買っといたよ。」
そう言って航は二人分の切符を凪に見せる。
ほっとした凪は切符に書いてあることを読み上げる。
「青海駅からアクアパレット水族館。あってますね!」
「凪じゃないんだから、間違えないよ。」
「今日も航さんは、すごいです!」
凪に褒められて航は満足そうに頷く。
二人は駅の改札を通って電車に乗る。
「切符、なくさないように俺が預かるよ。」
「お願いします。」
凪が航に切符を差し出す。
航が視線を落とすと窓からの光が反射して凪の首もとにキラキラ輝くものが見えた。さっきまで、気づかなかったが、それは桜貝だった。
「これ、桜貝!」
「そうなんです。なくさないようにママ…じゃなくてお母さんにネックレスにしてもらいました!」
「似合ってる。」
嬉しそうに凪が照れる。そんな凪が可愛くて、航はまた、嬉しくなる。
窓から見える流れるように過ぎ去る景色。夏の新緑だけが、変わらないまま。
「次はアクアパレット水族館、アクアパレット水族館です。」
電車のアナウンスが聞こえて凪が立ち上がる。すると、電車が揺れて、凪がよろける。
「…っ!」
航が凪の手をつかんだ。
「っぶな。」
「あ、ありがとうございます!」
ほっとした凪が言う。
航が手をはなそうとすると、
「手、つないだままでも、いいですか?」
と、凪が言った。その言葉に驚いた航。
心臓がもたないくらいにドキドキした。
思わせぶりなことばかり、言う凪だが、今回はいつもに増して、ひどい思わせぶりだ、と航は思った。
「小さい頃も、手をつないでもらってましたよね。久しぶりです。」
航は話す余裕もないほどに、ドキドキが止まらなかった。だが、凪は何も緊張していない様子だった。
手をつないだまま改札を抜けて外へ出る。
駅からアクアパレット水族館までは、歩いて3分で着く。
「チケットは持ってきたんだよな?」
「はい!かばんのポケットの中にいれておきまし…ないです。」
これ、さっきもあったよな…。さすがに航も水族館のチケットまでは、買っていなかったので、新たに購入する事にした。
「ごめんなさい。」
「怒ってないよ。もう一度、行けばいいだけだろ。」
もう一度行けるならそれは、それで航にとって嬉しかった。
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